こんにちは! お正月は楽しくすごせましたか? 新年が始まり、目標に向かって進んでいきたいです。
さて、COVID-19の期間、外出ができなくなり家に閉じこもっていたご高齢の方が、歩けなくなっていることが問題になっています。
また、施設に入っていたご高齢の方が年末年始は家族と自宅でゆっくりと過ごし、施設に戻った時に歩けなくなっていることがあります。
これまで、自立歩行されていた70代の方が、足に痛みを感じ、歩行距離が少なくなりました。その後1週間で自立歩行が難しくなり杖歩行に、そして歩行練習中に転倒し、1週間程度ベッドで安静後、歩行ができなくなってしまいました。
このような状況を皆さんの周りで聞いたことがありませんか。
このように約2週間~1か月程度で急速に進行する状態は、一体何が起こっているのでしょうか。
今日はサルコペニアとフレイルについて探っていきます。
サルコペニア
深刻な筋肉量の減少が起こり、筋力や身体機能が低下している状態を示します。
サルコペニアは、特に高齢者の身体機能障害や転倒のリスク因子になります。
ヒトの筋肉量は40代までは比較的維持されますが、そのあと徐々に減っていきます。なぜ、加齢に伴い筋肉量が減るのでしょうか?
加齢とともに失った筋肉を補うための新しい筋肉細胞を作らなくなるためです。また、筋力の低下は、筋肉の質と血管や神経の変化が影響してきます。
この筋肉の変化は、古くなった神経系が筋肉を動かす命令を伝えられない時や、酸素や栄養が不足しているときに起こります。
ヒトは歳を重ねると、活動量が減り、運動が減り、座っている、横になる時間が増えてきます。それが筋力の低下や筋肉量の減少の原因になっています。
その状態が続くと、筋肉量の減少により、身体能力が落ちて、歩行、椅子、布団からの立ち上がりが難しくなります。階段の上り下りもできなくなってきます。杖や歩行器を使用して歩行します。思うように足が動かせなくなります。
そのような状態のとき、転倒のリスクが高まり、転倒により捻挫、骨折などを起こしてしまい、安静にすることで、さらに歩行状態が悪化することがあります。自己にて歩行ができる状態にまで回復するのはかなりの確率で困難になり、長期医療が必要になってきます。
サルコペニアの判定基準
フレイル
加齢に伴い身体の予備能力が低下し、健康障害を起こしやすくなった状態のことです。
言い換えると、介護が必要になる前段階です。
サルコペニアが筋肉量の減少に焦点を置いているのに対して、フレイルは体重減少、倦怠感や活動度の低下などの項目が入っており概念が大きくなります。
フレイル、サルコペニアの両方の原因として、加齢や栄養不足、身体活動量の低下、さまざまな疾患の合併などが挙げられます。さらに、サルコペニア(筋力の低下)がフレイル(虚弱状態)に繋がるなど、2つの状態はお互いに関連し合っています。
サルコペニア、フレイルの進行は早く、その回復にはかなりの時間がかかります。また回復できないことが多いのです。
フレイルの評価基準 (J-CHS基準)
スケールでは、体重、主観的な疲労感、日常生活活動量に対する聴取、握力や歩行速度の計測を行い、フレイルによって引き起こされる上記5つの項目を評価します。
5項目のうち3項目以上に当てはまるケースを「フレイル」
1~2項目に該当するものは「プレフレイル」
いずれも該当しないものを「健常」と判断します。
2型糖尿病と筋肉量の関係
筋肉量が減り始める40代後半から2型糖尿病が増えてきます。
筋肉は身体の糖分の大部分をグリコーゲンとして貯蔵しています。インスリン感受性を保つ大切な部分になります。インスリン感受性が低下して、インスリンの作用が発揮できない状態のことをインスリン抵抗性と呼びます。2型糖尿病はインスリン感受性が低下し、血糖値が高い状態になります。
私たちは、運動量が減っても、食生活を変えることはなかなかしません。活動が減ってくると、カロリーを消費せずに、脂肪が蓄積されやすくなります。内臓脂肪になります。
日本に住んでいる65~84歳の高齢者1,629名(男性687名、女性942名)を対象とし、身長・体重・体組成測定、握力・膝伸展、屈曲筋力などの筋力測定、歩行速度や開眼片脚立ち検査などの身体機能検査、75g経口糖負荷検査による耐糖能評価を実施しました。
耐糖能の診断は、空腹時血糖値<110㎎/dlかつ、糖負荷後2時間血糖値<140㎎/dlかつ、HbA1c<6.5%の被験者を正常耐糖能とします。
空腹時血糖値≧126㎎/dlまたは、糖負荷後2時間血糖値≧200㎎/dlまたは、HbA1c≧6.5%、または経口血糖降下薬を内服中の被験者を2型糖尿病、
その他の被験者を前糖尿病と診断しました。
正常耐糖能群、前糖尿病群、2型糖尿病群の3群に分類し、サルコペニアの有病率を比較しました。
結果、男性では、耐糖能が悪化するにしたがって、サルコペニアの有病率が上昇する一方、
女性では2型糖尿病群でのみ、サルコペニアの有病率が増加していることが明らかとなりました。
さらに、年齢、BMI、体脂肪率、身体活動量、エネルギー摂取量、脳血管疾患の既往の有無で調整した結果、
2型糖尿病群では正常耐糖能群と比べて、サルコペニアのリスクが男性で約2.6倍、女性で約2.1倍有意に高まること、また、男性でのみ前糖尿病群で、正常耐糖能群と比べて、約2.1倍有意に高まることが示されました。
さらに、男性、女性において、加齢や低いBMI、高い体脂肪率はサルコペニアの独立したリスクとなっていることも明らかとなりました。
原著論文はこちらです。興味のあるかたは、読んでみてください。
サルコペニア、フレイルと2型糖尿病は関係が深く、自分の問題、家族の問題、そして世界共通に起きている健康問題として考え、取り組んでいかなければならない重要課題であることが分かりました。
今日も最後まで読んで下さりありがとうございます。