みなさん、こんにちは。
災害時の救助にあたる救援者の方の抱えるストレス、そして心のケアについてお話していきます。
救援者の4つのストレス
救援活動にあたる方は、大きく4つのストレスがかかることが分かっています。
- 基礎的ストレス: 被災地ではライフラインが不足し、環境が悪くなり、生活していくための物品、環境が不足します。仮設テントや布で仕切られた場所での睡眠と食事を摂取していくことになります。マズローの欲求5段階のうちの一番下のベースである、生理的欲求が充足できなとことによるストレスは大きいです。
- 危機的ストレス: 生命の危機を脅かす、ショックな出来事に遭遇し、トラウマ的ストレスが生じます。死を目の前で見る事、助けたい命がありながらも力が及ばず救命できないこと、地震の中の救援活動中にやってくる余震、トリアージしなければならない決断などが大きなストレスとなります。
- 累積的ストレス: 救命やボランティア活動を続けていく中で、生じてくるストレスがあります。状況の大きさや予期できない出来事が次々やってきます。すべての人を助けることができない罪悪感、無力感、終わりが見えない不安に悲しくなります。命令された任務であれば、自分から辞めるということが言えないジレンマに陥ります。それらがストレッサーになります。
- 二次的心的外傷ストレス: 救援者が被災地で見る、聞く状況がストレスを生み出します。例えば、地震や津波、火災で壊滅的になった建物の状況やご遺体、重症な方を目撃する、それに対して何もできない罪悪感が生じること、被災者からの体験を聞くことで無力感に襲われます。それらが、ストレッサーになります。
救援者のストレス反応を理解する
被災者だけではなく、ストレスを抱える救援者も同じように身体・心・行動にストレス反応が出てきます。
身体面:動悸、息切れ、食欲低下、睡眠障害、倦怠感、頭痛、頭重感、視野狭窄、平行感覚障害などがあります。
行動面:逃避的行動、攻撃的行動、感情のコントロール困難、過食と拒食など。相反する行動が起こることがあります。
精神面:無力感、罪悪感、集中力の低下、意欲の低下、任務への執着、高揚感などがあります。無力感と高揚感など時期により相反する感情があります。
救援者の特徴的なストレス
上記の身体面、行動面、精神面をみると、相反する感情や行動があることに気が付くと思います。
救援者は大きな責任感や使命感を持ち、現場に入ります。そのとき、感情は高揚しており、そのような状態で活動を継続すると、自分自身の体調の変化に気が付くことが遅くなります。
使命感は自分にしかできないと思い、ゆっくりと休息がとれないと、抑うつ状態を引き起こすことがあります。疲弊の状態が続くことがあります。
燃え尽き症候群:ストレスが強い状況で、自分の能力や適応力を全て出し切ったときに、極度の疲弊状態になります。目の前の仕事から逃避したり、アルコールや薬物に依存することがあります。これまで、人と建設的な態度で過ごしてきた方が、時に同僚や被災者に辛く当たる態度をとることがあります。
もとに戻れない・被災者離れ困難症: 被災者が自立してくると援助の必要性が減ってきて、感謝されることがなくなり、自分が否定された感情になります。任務が終ると、自分の居場所を失った疎外感を感じて、失望や怒りを感じたりイライラすることがあります。
救援者のストレスマネジメント
今後、どのような災害が起こるのか、いつやって来るのか、分かりませんが、自分が救援や派遣者として関わることもあるかと思います。
その時に、救援するということは自分にもストレスがかかることを理解している事と、していないのではストレス反応に大きく左右するのではないかと考えます。
また個人で行う自己管理だけではなく、チームや組織で行う支援があります。
ここでは自分で行えるストレスマネジメントについて述べたいと思います。
- 健康状態の確認。
- 自分の感情(怖いことや心配な思い)を受け入れてアウトプットする。
- 救援活動をすることを自分の成長の機会と考える。
- 家族全員で自分が参加する救助活動についてや思いを話す。
- 自分に負担となることをしないようにする。限界を越えない。
- 休憩を適宜とる。
- 自分の感情を受け入れて、恐怖さいらだちも人に話す。
- ストレッチや簡単な運動をする。
- 呼吸を意識して、身体の力を抜く。
- 自分の行動を自分で褒める。
- 任務や活動中に人と雑談やコミュニケーションをしていく。
- 同僚、仲間のことを認めあい、共有する。
- バディを大切にする。仲間同士で、助け合い、お互いに認め合いながらの活動は大きいです。
- 活動が終了したことを自分で褒めて、活動報告を行う、自分が行った体験を人に聞いてもらう機会を作る。
- 体験を通して学んだことや考えたことを、社会貢献や将来にいかせるのではないかと考えてみる。
- 不在時に心配、祈りながら待っていてくれた家族や友達に感謝し、無事に帰ってきたことを伝えて、会ってみたり話す時間を取り戻す。
このようなことができるのではないでしょうか。
私も、活動していたときを振り返ると、そのときは自分のことを考えることができないくらい必死でした。海外での活動であれば言葉がスムーズに通じないことで、被災者とコミュニケーションすることに集中しています。
自分の体調をゆっくり考えるよりも、目の前の現実に圧倒されて、常に何ができるのだろうかと考えていました。
とにかく、目の前のことに必死だったということです。
私は、活動を終えて、日常にもどった後に、仕事にすぐに復帰をすることになりました。
ハードでしたが、それが却って良かったのかもしれません。
しかし、休めるならば、ゆっくりと休養をとることも必要だと思います。
その合間、合間で、自分の行ったことをじっくりと振り返ることをしました。
家族、友達、人に話すことを続けてきました。そうして、人に話すと、どんどん気が付くことがありました。
コミュニティに参加してそこで同じような仲間と共有することも、大きな支えになります。
このようなブログに書くことも続けてきました。
そのような行動は、自分なりに整理が出来たと思います。また、次にするべきことが少しずつ見えてきました。
これらの記事が、今後活動する方や救援者を支えていく人の力に少しでもなれば、幸いです。
多くの方に読んでもらいたいという気持ちから、英語での発信も少しずつ増やしていこうと思います。
本日も最後まで読んで下さりありがとうございます。