こんにちは! 今週は、健康的長寿についてのお話です。
今回は、コレステロールに焦点をあててみます。
スーパーエイジャー(健康的長寿者)は善玉コレステロール値が高い、成長ホルモンIGF-1値が非常に低い、MDP値が非常に高いことが分かっています。
MDPはマクロファージおよび樹状細胞への分可能を示す前駆細胞のことです。
今日は、コレステロール値や世界の研究を紹介していきます。
まずはスーパーエイジャーの方々が高い値である、善玉コレステロールとは何?
それらはどうしたら、高くなるのか? など見ていきたいと思います。
総コレステロール
健康診断を受けたことがある人は、検査の項目に中性脂肪、HDLコレステロール、LDLコレステロール、総コレステロールの値があることをご存じではないでしょうか。
脂質異常の有無を調べるために採血から検査しています。これらは自覚症状が無いため、私たちは値を見て、生活の見直しに活用することができます。
総コレステロールは、HDL(High Density Lipoprotein )高比重リポたんぱく質と
LDL (Low Density Lipoprotein)低比重リポたんぱく質を合わせたものになります。
日本では、HDLは善玉コレステロール、LDLは悪玉コレステロールと呼ばれており、こちらの方がなじみがあるかと思います。
日本人間ドック学会の基準では以下の基準値になります。単位は㎎/dLで表し、1dLの血液中にどれくらい含まれているかで見ていきます。(基準値は学会や健康保険組合により、値が多少前後します。)
要注意: 139以下 基準範囲: 140~199 要注意: 200~259 異常:260以上
HDLコレステロール(善玉)はコレステロールを回収して、肝臓へ戻す役割があります。
異常: 34以下 要注意: 35~39 基準範囲 : 40以上
HDL値は中年期から8年に5ずつ下がっていきます。男女で差があり、男性ならHDL値が60㎎、女性ならHDL値が70㎎あればすばらしいとされています。
LDLコレステロール(悪玉)は肝臓から各臓器へコレステロールを運ぶ役割があります。
要注意: 59以下 基準範囲: 60~119 要注意: 120~179 異常:180以上
nonHDLコレステロールについて
2020年から新基準が加わりました!
異常: 89以下、210以上 要注意: 150~209 基準範囲 : 90~149
nonHDLコレステロールの数値が高い場合には,
血管の詰まりや、脂質代謝異常、家族性高脂血症などが疑われます。
nonHDLコレステロールが基準値を下回る場合には、
栄養吸収障害や低βリポタンパク血症などが考えられます。
また、肝硬変の場合にもnonHDLコレステロールが低くなることがあります。
食生活の改善
食生活に気を付けることで、この値が多少でも改善できるのです。しかし、もともとの体質や遺伝的なものもあり、個人差はあります。
食生活を見直す基準として、ご自分のコレステロール値を気にしてみてください。そこで、nonHDLをチェックします。
nonHDLコレステロールが高すぎる方はコレステロールや飽和脂肪酸など脂質を摂りすぎないように注意したいものです。糖質の摂りすぎは中性脂肪の高値につながることが分かっています。
揚げ物を避けたり、糖分の多いお菓子を減らすことも効果的です。
心がけて摂取したい食品は
これって、わたしたちにはなじみのある和食ですね! でも、ここ40年くらいで日本も欧米化になり
私たちはバラエティあふれる食品をだれでも、どこでもすぐに手に入れて食べることができます。
つまり、誘惑が多くて、和食よりも洋食が普通になってきて、私たちの生活も変化してきました。これは、日本だけではなく、アジア、世界でこの傾向がみられています。
ここで、生活習慣改善などで頑張っても、なかなかコレステロール値が正常にならない場合は遺伝の可能性もあります。
家族性高コレステロール血症
遺伝的原因の代表に「家族性高コレステロール血症」があります。
日本では200~500人に1人の割合で存在します。
家族性高コレステロール血症の特徴には次の3つがあります。
- 未治療の状態でLDLコレステロールが180 mg/dL以上
- 黄色腫(手背、肘、膝などの黄色いしこり又はアキレス腱の肥厚)あるいは皮膚結節性黄色腫(皮膚の黄色いしこり)
- 家族(2親等以内)に家族性高コレステロール血症の存在あるいは若くして冠動脈疾患(狭心症や心筋梗塞)発症歴がある
以上の2項目が当てはまる場合に診断が確定します。
家族性高コレステロール血症であっても、早くから適切な治療を開始すれば、動脈硬化の進行を防げます。
食事療法及び運動療法は基本ですが、それだけで改善は難しくそのときは薬物療法が必要となります。
現在、薬物療法の第一選択として、肝臓でのコレステロール合成を抑制するスタチン製剤があります。
世界のコレステロールの研究
2020年6月にNatureにパブリッシュされた研究の紹介をします。
この論文によると、世界の1億人以上のデータを調査した研究で、人々の食事、運動、医薬品の使用状況の変化が心疾患の最も重要な原因の1つである血中コレステロール値を左右していることが明らかになりました。
少し、詳しくみていきましょう。世界200か国で、1127件の研究のデータを分析しています。
18歳以上、1億260万人を対象に1980~2018年の39年間のコレステロール値の世界的なコレステロールの傾向を評価しています。
その結果、総コレステロール値とnonHDLコレステロール値は、
低・中所得国、特に東アジアと東南アジアで上昇し、
高所得の欧米諸国、特に北西ヨーロッパ、中央ヨーロッパ・東ヨーロッパで低下したことが明らかになりました。
ベルギーとアイスランドでは、1980年以降、nonHDLコレステロール値が最も大きく減少しています。
一方、中国は、1980年にnonHDLコレステロール値が最も低いグループでしたが、2018年には最も高いグループに入っていました。
2017年には、nonHDLコレステロール値が全世界の390万人の死亡の一因として関与しています。
その半数は、東アジア、東南アジア、南アジアで起きていた血中コレステロール値の高い人が低・中所得国で増え、高所得国で減る傾向にあることが分かりました。
今回のテーマのコレステロール値は、私たちが考える脂質異常の指標や栄養状態の指標だけではなく、
低所得国での低栄養、貧困の指標になり、
高所得国では暴飲暴食、食事の見直し、運動不足の生活習慣病の指標になっています。
高齢者では、低栄養やフレイルの指標にもなります。
これから、みなさんもコレステロール値の見方を気にしてみてください。自分の健康はもちろんですが、自分の住んでいる国の傾向、そして世界へと目を向けていけるのではないでしょうか。
この参考論文を掲載しておきますので、興味があるかたは以下の原著論文を読んでみてください。
Repositioning of the global epicentre of non-optimal cholesterol Nature 582, pages73–77 (2020)
最後まで読んで下さりありがとうございます。