ワトソンの看護理論

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Magandang hapon. (マーガンダン ハポン)こちらはタガログ語で「こんにちは!」のあいさつです。

さて、みなさんはジーン・ワトソン博士についてご存じでしょうか。

1985年にワトソン看護論を提唱されました。看護学生のときに習います。(国家試験にも時々出ます)

先日、そのワトソン博士とご家族が来日され、私はそのご家族にお会いすることができました。

娘のJulie Watsoonさんが、私の勤務先の大学で講演会を開いてくださりました。実際に講演の前後でお話をする機会があったり、質問を投げかけるチャンスがありました。

本日はその内容をお伝えしていきたいと思います。

目次

ケアリング理論

このケアリング理論は、人が看護の対象と向き合う時に、自分がどういう状態であるかを知ることが大切であると述べられています。ケアリングは身体だけではなく、心そして、魂の癒しも必要であると考えられています。

患者さんをケアする人も自分自身を大切にすることから始まり、自分というものを関与させるためには、ケアの対象と同時に自分を癒すことが重要であります。この部分はセルフマネジメント、ストレスマネジメントにも共通する部分であると感じます。

人が人々をかけがえのない人間としてケアし、相手を思いやり気づかい、理解し、支えることです。 それは温かな関係作りからスタートし、その過程において対象者も看護者も共に成長することができるということを理論立てています。

患者と看護師の互いの主観的世界がふれあい,ともに自らの存在のあり様をつくり出していく二者間の霊的・精神的存在が考慮されたケアをトランスパーソナルケアと呼んでいます。

ここで、少し体験談も含めて説明を加えてみたいと思います。

トランスパーソナルケア

トランスパーソナルケアリングにおいて,看護師は看護の対象である患者の経験の中に入り込むと同時に,患者も看護師の経験の中に入り込むことを意味しています。1対1の関係の中で、もう一つの共有する空間ができあがることです。

ターミナルケアの患者さんに、これまで生きてこられた人生について語る時間を作ります。それを記録として文字起こしをして人生の本を作成していくものがあります。信頼して、話をしてくれることの中で、二人の関係の中で、お互いの思いを話していきます。

そこには両者が密接に関与している関係を間主観的関係とし、そこでは 2 人で 1 つの出来事を経験し,両者は現在および未来につながる「共に関与する者」になっているのでないかと感じます。

ワトソンはトランスパーソナルケアリングが行われる“瞬間”をカリタス領域としてとらえ,患者と看護師の間主観的・超越的・人間同士の関係が生まれると意味づけています。

カリタスプロセス The Caritas Proccesses

Caritas カリタス領域という言葉は、あまり耳にしない言葉ですね。これには奥深い意味があります。

カリタスを日本語に訳すと愛という意味があり、キリスト教の慈愛の心につながる意味を持っています。

ワトソン博士はカリタス10のプロセスを提唱していますので、紹介したいと思います。(英語)

1. Embrace (Loving-Kindness)

Sustaining humanistic-altruistic values by practice of loving-kindness, compassion and equanimity with self/others.

2. Inspire (Faith-Hope)

Being authentically present, enabling faith/hope/belief system; honoring subjective inner, life-world of self/others.

3. Trust (Transpersonal)

Being sensitive to self and others by cultivating own spiritual practices; beyond ego-self to transpersonal presence.

4. Nurture (Relationship)

Developing and sustaining loving, trusting-caring relationships.

5. Forgive (All)

Allowing for expression of positive and negative feelings — authentically listening to another person’s story.

6. Deepen (Creative Self)

Creatively problem-solving-‘solution-seeking’ through caring process; full use of self and artistry of caring-healing practices via use of all ways of knowing/being/doing/becoming.

7. Balance (Learning)

Engaging in transpersonal teaching and learning within context of caring relationship; staying within other’s frame of reference; shift toward coaching model for expanded health/wellness.

8. Co-create ( Caritas Field)

Creating a healing environment at all levels; subtle environment for energetic authentic caring presence.

9. Minister (Humanity)

Reverentially assisting with basic needs as sacred acts, touching mindbodyspirit of spirit of other; sustaining human dignity.

10. Open (Infinity)

Opening to spiritual, mystery, unknowns — allowing for miracles.

文化、倫理、スピリチュアルな次元での関わりも含まれています。

ケアリングを通じて、人々の心を癒し、慈愛の心が平和へと続いていくのでしょう。

ヨガ、瞑想の分野にも通じるところがあるように感じます。

心のケアをするときに、業務に追われていて、人の話を顔を見ることなく必要なことだけを聞く、業務的にケアをすることがあります。心が置き去りになっていては、そこから癒しや平和というものは見えてこないですね。

Seven Sacred Sutras

人と人の関わりの重要性から生まれてきた7つの因子の紹介です。

  1. Stillness
  2. Silence
  3. Solitude
  4. Spirit
  5. Simplicity
  6. Service
  7. Surrender

ワトソン博士のSeven Sacred Sutrasの動画が公開されておりますので、紹介します。(ご本人です)

Jean Watson & The Watson Caring Science Institute 

このワトソン博士の理論は、医療者ー患者 関係だけではなく、私たちはすべての人と人の間で、活用できるものだと感じます。例えば、 生徒―先生 、選手-コーチ、 自分ー友達、 自分ー家族などなど、、、。

自分を活用して意識的に関わっていくことやその人に対して心を開くということ、そのときの手法には過程があることを知ることが出来ました。自分の体験を振り返ることで具体的になり自分の中に落とし込むことにつながるのだと感じます。

看護理論はいくつかありますが、今回はワトソン博士のヒューマンケア理論について紹介しました。

講演会で質問

約90分の講演は、英語で行われ、日本語の通訳がありました。日本語に訳すと理解することが難しい部分も感じました。

そのプレゼンテーションを聴いたあとのディスカッションパート。

私は、勇気を出して手を挙げて質問をしました。日本語か英語か迷いましたが、日本語で質問をすると通訳をはさみ、100%伝わらない表現があります。

目の前の人の言語で話すことの大切さをこれまで何度も経験していました。上手く言えなくても、伝えたいという気持ちがあれば口から何とか出てくるのかもしれません。

エイッ。英語で話してみようと一瞬思いました。

緊張しましたが、英語で感想と質問をスタート。Jean Watosonの表情がパーッと明るくなるのが伝わりました。私の緊張もなくなり、今、まさに1対1でコミュニケーションをしているのだ!と思うことができていました。

そして投げかけた問いに丁寧に回答をしてくれました。

流暢でなくても、思いは伝わるんだな!そして、英語学習を毎日、地道に続けてくると、こういうところでも活用できるんだと感じた1日でした。

講演会が終了してからもお話をする機会をいただけたのは大変嬉しいです。勇気を1歩踏み出すことから広がる出会いがあるなと感じます。

チャンスがあれば、精神看護を研究している一人として、私もアメリカにあるWatson Caring Science Institute(研究所)にいつの日か行ってみたいと思います。

そして、今後も研究が続けられ、理論は発展していくでしょう。私は今回のように、世界の各国を訪れて、人と人とのコミュニケーションを大切にして、自分たちの理論を普及していく活動に刺激を受けました。今は世界各国に広がっています。

最後まで読んで下さりありがとうございました。

  • Nursing:The Philosophy and Scienece of Caring. 1979(看護ーケアリングの哲学と科学)
  • Nursing:Human Scienece and Human care;the Theory of Nursing.1985(『ワトソン 看護論ー人間科学とヒューマンケア』医学書院 1992年)
  • Caring Science as Sacred Science.2005(『ワトソン21世紀の看護論―ポストモダン看護とポストモダンを超えて』日本看護協会出版会 2005年)
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